外交
アフリカ北西部に位置するモロッコは,同じアラブ・イスラム諸国との関係に加え,アフリカ及び地中海諸国の一員として,これらの国との密接な関係を有している。欧米とも良好な関係を有し,柔軟で多角的な外交を展開している。2012-2013年,モロッコは国連安保理非常任理事国。
アラブ・イスラム
頻繁な要人往来を始め関係が深い。中東和平に関しては,パレスチナの独立を支援しつつも,イスラエルに多数のモロッコ系ユダヤ人コミュニティーが存在する事情もあり,イスラエルに対して現実的かつ柔軟な対応をとっている。
アラブ・マグレブ連合(AMU)
モロッコ,アルジェリア,チュニジア,モーリタニア,リビアの5カ国で1989年に発足したアラブ・マグレブ連合(AMU)は,域内協力促進を目的としているが,モロッコ・アルジェリア間の問題(西サハラ問題,国境閉鎖)が障害となり,活動が停滞している。
アフリカ
西サハラ問題との関連でアフリカ連合(AU)から脱退しているが,関係は重視し,国王がアフリカ諸国を歴訪するなどしている。サブ・サハラ地域との南南協力にも力を入れている。
欧米
モロッコは,2008年にEUから包括的なパートナーシップである「前進的地位」を付与されている。フランスとは,歴史的に深い繋がりがあるのみならず,モロッコにとって最大の貿易相手国でもあり,経済・技術協力,人的交流等極めて緊密な関係を結んでいる。隣国スペインとも結びつきが強く,領土問題(モロッコ北部のセウタ,メリリヤ等)などで両国関係がぎくしゃくすることもあるが,概して良好な関係を保っている。中東問題や西サハラ問題の解決に欠かせない国として対米政策を重視しており,経済的にも,2004年5月に自由貿易協定を締結するなど,関係強化が進んでいる。
西サハラ問題
西サハラ地域は,現在はモロッコの実行支配下にあるが,これに抵抗するポリサリオ戦線が「サハラ・アラブ民主共和国(RASD)」の樹立を宣言している。国連は,同地域の帰属を問う住民投票を提案し,1991年以降,「国連西サハラ住民投票監視団(MINURSO)」を派遣しているが,有権者認定を巡るモロッコとポリサリオ戦線の対立から,住民投票は実施されていない。モロッコは,2007年4月,住民投票の代替案として,モロッコの主権下で西サハラ地域に自治権を付与する案を国連に提出。これを受け,国連安保理は当事者に前提条件なしで交渉に入るよう要請する決議1754号を採択。右決議に基づき,2007年6月から2008年3月にかけて,国連事務総長特使の仲介の下,モロッコ,ポリサリオ戦線及び近隣国(アルジェリア,モーリタニア)の参加を得た直接交渉が計4回開催されたが,事態は膠着。その後も非公式会合が実施されてきているが,議論は進展していない。